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はまぎん こども宇宙科学館の地域連携~科学館で育った子どもが地域を育む好循環

インタビュー

はまぎん こども宇宙科学館の地域連携~科学館で育った子どもが地域を育む好循環

夏休みの自由研究でおなじみの科学館。小学生の頃の思い出を紐解いてみると、地域の科学館に一度は足を運んだことのある方も多いのではないのでしょうか。
科学館は自然科学に関連する展示を行う博物館であり、主に自治体が設置する社会教育施設です。2003年からは民間のノウハウを活用して市民サービスの向上を図ることを目的に、指定管理者制度が導入されています。現在の科学館は、従来からの科学に関する展示はもちろん、学校教育の支援の場としての役割のほか、学校・家庭以外での「サードプレイス」として子どもにとって居心地の良い場所である、といった役割も求められています。
このような社会からの多様な期待に応え、その役割を果たしていくためには、地域との強い連携が欠かせません。

株式会社コングレは指定管理者として、全国で6つの科学館の管理運営を担当しています。
その中で、今回は指定管理者「CTC共同事業体」として管理運営する、「はまぎん こども宇宙科学館(横浜こども科学館)」における地域連携の取り組みを、洋光台連合自治町内会会長の三上 勇夫さん、博物館実習生の三栖 輝美歩さん(日本獣医生命科学大学3年生)のお話を交えてご紹介します。

子どもたちの「やりたい!」を尊重する-竹の水鉄砲作り教室-

横浜市磯子区、JR洋光台駅から徒歩5分の場所に位置する当館。
2023年7月22日(土)から8月31日(木)まで、『2023夏休み特別企画「自由研究ラボ」~宿題だって楽しみたい!~』を開催しています。本企画の詳細は「こちら」をクリックしてご覧ください。
8月17日(木)には、当館に隣接する洋光台駅前公園にて、洋光台サイエンスクラブの教室として「1日プレイパークに参加しよう!」(主催:はまぎん こども宇宙科学館、洋光台駅前公園プレイパーク運営委員会)を同時開催。そのプログラムの一つとして、洋光台連合自治町内会の方々を講師に招き、「竹の水鉄砲作り教室」と「竹の水鉄砲大会」を実施しました。

「洋光台サイエンスクラブ」は、当館と洋光台まちづくり協議会が協働し、子どもたちの科学への興味を育み、理科離れに歯止めをかけることを目的とした会員制の組織で、年間を通じてさまざまな種類と難易度のプログラムを実施しています。 「プレイパーク」は、「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーに、禁止事項を極力なくした屋外の遊び場です。洋光台駅前公園プレイパークは毎月2回、同公園で開催しています。洋光台地域にとってプレイパークは、子どもたちの遊び場であるだけではなく、親同士のふれあいの場、地域の「つながり」を象徴する場でもあります。

さて、「竹の水鉄砲作り教室」では、館内で子どもたちが自らの手で竹の水鉄砲を作ります。竹以外の材料は、スポンジや輪ゴム、ビニール袋など身近にある物ばかりで、家に帰ってから水鉄砲が故障したとしても、自身の手で修理できるように工夫されています。

子どもたちは講師を囲んで席につき、工作のポイントや水が出る仕組みの説明をよく聞いてから工作に取り掛かります。組み立てる表情は真剣そのもの。一人でうまくできなくても、運営補助を担当する博物館実習生のお姉さんたちがサポートし、一緒に作り上げていきます。

博物館実習は、大学で学芸員課程の講義を履修している学生を対象に、実践的な経験や訓練を積むことを目的に、全国の博物館で行われています。この日は、9日間にわたって実施された当館での実習最終日でした。

実習生の三栖 輝美歩さん(日本獣医生命科学大学3年生)は、子どもたちと目線を合わせつつ、「上手!」「職人みたい!」と一つずつ褒めていました。
その理由を聞いてみると、「子どもには、自分でやりたい!という気持ちがあると思うから、できたことを褒めるようにしています。一つのことができると、これもがんばってみようとチャレンジしてくれるので、それを見守っているのが楽しいんです」と明るい笑顔で答えてくれました。

最初はうまくできなかった小さい子も、実習生に助けてもらいながら四苦八苦して完成させ、いよいよ外に出て手作りの水鉄砲を試すときがやってきました。

成長した地域の子どもたちに再会できる喜び

教室で水鉄砲を完成させた子どもたちは、まず試し撃ちをして各自で一通り遊んだ後、「竹の水鉄砲大会」にエントリー。大会の審査員を務めるのは、洋光台連合自治町内会会長の三上 勇夫さんです。

三上さんは、洋光台サイエンスクラブの立ち上げ当初から、子どもたちを育む活動を続けています。
洋光台まちづくり協議会と科学館が協力して、地域の子どものために何かをやろうと思い、「地域と科学館の関わりをどうつくるか」「未来のために何をやるか」と議論を重ね、最初に取り組んだのが、当館から徒歩10分のところにある洋光台緑地のトンボ池(ビオトープ)づくりです。

ビオトープを作るにあたり、科学館に専門の先生を招いて勉強会を行い、子どもたちは思い思いの水辺の絵を描きました。そして、先生がそれらの絵をご覧になり、みんなの意見をくみ取ってビオトープの形を提案していただきました。それから子どもたちと保護者や学校関係者が一緒になって、緑地の土を掘って粘土を作り、池の底と池の壁を粘土で固め、ついにトンボ池が完成したのです。

完成から18年が経過したトンボ池。今も当館と地域の方々が連携して、トンボ池での自然観察教室を開いています。そして、この教室やプレイパークで、三上さんは、かつての子どもたちと再会を果たしているのです。

「一緒にトンボ池を作った小学生が、今はママになって双子の子どもを自然観察教室に連れてきてくれた。大人になってから、教室や活動を手伝ってくれるようになった子たちもいる」と三上さんはうれしそうです。「地域で長く活動をしていれば、やがて子どもが家族を連れて、またその地域に戻ってくる。これほどうれしいことはない。そして、その繰り返しがまちの発展につながると信じて、今日もここに来ているんですよ」と三上さん。

おばあちゃんと通った思い出の科学館で実習

水鉄砲作り教室で工作のサポートをしていた博物館実習生の三栖さんも、実は子どもの頃から当館とつながっている一人です。

三栖さんは、現在、東京都武蔵野市の大学に通っています。大学の最寄り駅から洋光台駅までは、電車での移動時間だけでも1時間半はかかります。そこで、なぜこんなに離れた場所を実習先に選んだのか尋ねると、「実はこの近くにおばあちゃんが住んでいて、小学生の夏休みにこの科学館に何度も通っていたんです。だから、実習先を選ぶとき、自分が通った科学館でやりたいと思ったんです」と、その理由に驚きの縁を感じました。

実習最終日を迎えたこの日、これまでを振り返りながら三栖さんは、「思い出深いこの科学館で何かのお役に立てたらいいなと思っていましたが、実習の勉強だけでなく、社会に出てから役に立つこともいっぱい経験できて、とても充実していました」と満足そうでした。

コングレは指定管理者として、これからも地域の皆さまと一緒に、子どもたちの好奇心、科学への興味関心を育み、未来が生まれる「場」をつくる取り組みを続けてまいります。

はまぎん こども宇宙科学館(横浜こども科学館)

【開館時間】
9:30~17:00 ※最終入館は16:00まで
(夏休み期間中は9:00~17:00まで)
※状況により、変更する場合があります
【休館日】
第1・3火曜日、年末年始、臨時休館(夏休み中は無休)
【入館料】
大人:400円、小・中学生:200円、未就学児:無料
【プラネタリウム入場料】
大人:600円、小・中学生:300円、4オ以上:300円
※3オ以下のお子さまでも、座席を利用される場合は有料となります。