「スポーツビジネスジャパン コンファレンス2025」をIMAGINUSで開催しました~「Business day」2日目
2025年2月6日(木)~8日(土)、株式会社コングレ直営の科学体験施設「IMAGINUS(イマジナス)」(東京都杉並区、JR中央線・総武線「高円寺駅」北口から徒歩5分)で「スポーツビジネスジャパン コンファレンス2025」(主催:日本スポーツ産業学会、株式会社コングレ)を開催しました。
スポーツビジネスジャパンは「スポーツビジネス促進」と「スポーツを通じた地域活性化」のためのプラットフォームとして、2016年からスタートしたスポーツビジネスに特化した専門展示会&コンファレンスです。
今回は「スポーツビジネスによる、地域活性の可能性と未来へのDX」をテーマに、B to Bを中心としたコンファレンスプログラム「Business day」(2月6日・7日)、B to Cのスポーツアクティビティプログラム「Public day」(2月8日)を実施しました。
レポート第2回は2日目のプログラム。スポーツビジネスの最先端事例が盛りだくさんのセッションをお届けします。

セッション5 スポーツビジネス市場拡大を契機としたパナソニックグループの取り組みについて
苅部 朋幸 氏 パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社ビジネスソリューション本部プランニングセンター DX推進課課長
村林 紘行 氏 株式会社ガンバ大阪 常務執行役員 事業本部 本部長
山崎 雄也 氏 パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 キャビンUX事業開発室 商品企画担当マネージャー



最初に苅部氏からスポーツビジネス市場の拡大を契機にしたパナソニックグループのプロジェクト概略の紹介があり、続いて村林氏がサッカーJリーグ・ガンバ大阪の取り組みを紹介しました。
昨年11月9日にはオープンして間もないグラングリーン大阪内のロートハートスクエアうめきたにて、アウェイのジュビロ磐田戦のパブリックビューイングを開催。これはパナソニックグループが、まちの中心に4.5万m2の広大な緑地空間が広がるグラングリーン大阪の「 MIDORIパートナー」であることから企画しました。有料席500席が即完売し、立ち見や芝生席を含め多くの来場者で賑わい、グッズや飲食の販売も好調で、スポーツコンテンツによる地域活性化の好事例となりました。
山崎氏はアジアアイスホッケーリーグ・横浜GRITS様のホームゲームを対象としたラグジュアリーな観戦プレミアムツアービジネスを紹介しました。特別車両「WELL Cabin」による横浜駅からアリーナへの送迎、推し活ファンの期待を満たす選手との交流など、勝敗に関係なく一つの推し活体験として楽しめる特別なコンテンツの提供です。
最後に苅部氏が「パナソニックグループはスポーツ×エリア活用・地域活性・パートナー共創、そして訪日インバウンド/ツーリズム分野で注目されるホスピタリティビジネス×スポーツの取り組みについて、多様な主体と協業して進めていきたい」と話しました。
セッション6 建設・運営・地域が一体となり創り出す、民設民営スタジアム・アリーナの未来
一居 康夫 氏 株式会社大林組 設計本部建築設計部 部長

プロ野球(NPB)、Jリーグ、Bリーグ、SVリーグなどプロスポーツの本拠地としてスタジアム・アリーナの計画が各地で進んでいます。中でも数少ない民設民営のスタジアム・アリーナは収益の多様化やプロクラブの自由な意思を反映できる点で注目を集めていますが、一方で高い建設費やランニングコストなど事業化が難しいという課題もあります。
そこで一居氏は、大林組が設計施工を担当したNPB・北海道日本ハムファイターズの「エスコンフィールドHOKKAIDO」と、2025年4月に開業するBリーグ・神戸ストークスの「GLIONアリーナ神戸」の特徴や工夫の事例を紹介しました。アメリカのMLBやヨーロッパのサッカースタジアムを視察した経験から、高い集客力、豊富な収益源、多様なコンテンツを実現していることを学び、エスコンフィールドHOKKAIDOでは、アジア初の開閉式天然芝球場、回遊型コンコースに多様な店舗・施設の配置、Bリーグ公式戦・コンサートの開催にも対応するなど様々な設計・建築上の工夫を盛り込みました。その結果、2024年北海道ボールパークFビレッジの年間来場者数は418.7万人を記録しています。これらの設計思想はまもなく開業する「GLIONアリーナ神戸」にも取り入れられています。
最後に民設民営スタジアムの未来に向けて、一居氏は「フィールド、アリーナ、スタンドを360度コンコースが囲み、店舗や賑わい施設が配置された現状からさらに拡張していき、来場者×滞在時間が増していく。そして最終的にはスタジアムを中心としたまちとして成長していく」という展望を語りました。
セッション7 スポーツ業界のサステナブルな人材育成に向けて ~人材育成の必要性とその未来~
坂井 亮太 氏 ぴあ株式会社 スポーツ・ソリューション推進局 スポーツビジネスマネジメント部 部長

チケットでお馴染みの"ぴあ"は、実はチケット販売以外でも「集客」「マーケティング」などをはじめ幅広い事業領域でスポーツビジネスの舞台を支えています。その中でスポーツ業界の「人材育成」に課題を感じ、コロナ禍で大きな変化が生じた2020年から人材育成プロジェクトに取り組んでいます。
坂井氏はスポーツビジネスの現場で求められている3つの力を「チケッティング、ファンクラブを中心とした現場運用にかかわる知識」「スポーツビジネスの特性に関する全体理解と本質的な考え方」「テクノロジーを含む、スポーツだけにとらわれないアイデア・イノベーション」と定義し、それらを体系的に学べる「ぴあスポーツビジネスプログラム」の事例を紹介。各スポーツ団体において活躍する多数の専門講師陣を招聘し、豊富な現場経験に基づいた実例を交えながら講義を行っています。
これまでに4期約80人の卒業生を輩出しており、坂井氏は「スポーツの現場を支える優秀な人材を育て、競争ではなく協創を通じて、スポーツビジネスの未来を一緒に考える仲間を増やしていきたい」と話しました。
セッション8 DeNAが見るスポーツ産業とまちの未来
對馬 誠英 氏 株式会社ディー・エヌ・エー スポーツ・スマートシティ事業本部 本部長

DeNAは、2011年に横浜DeNAベイスターズを承継してプロ野球に参入して以来、2018年にBリーグ・川崎ブレイブサンダース、2021年にJリーグ・SC相模原を加え、3つのプロスポーツチームの運営を核とした「スポーツ事業」を展開しています。横浜DeNAベイスターズの観客動員数は毎年増加を続けて稼働率は96%に達し、2024年は過去最高の236万人を動員しました。
對馬氏は、横浜DeNAベイスターズではチームとスタジアムの一体運営による座席の充実、ホスピタリティなどに取り組んでおり、2026年春には横浜スタジアム隣接地の「BASEGATE横浜関内」に日本最大級の常設型ライブビューイングアリーナ「THE LIVE(ザ ライブ)」、創造遊びとテクノロジーを融合させたエデュテインメント施設「Wonderia(ワンダリア)」を開業し、 新たなエンターテインメント体験を提供していく計画を紹介しました。
また、川崎ブレイブサンダースでは川崎駅前キッズスクールの拡大、カワサキ文化会館などでのバスケ体験機会の提供、SC相模原では社会課題解決に向け地域とのつながりを強化している「ジモトアイプロジェクト」の事例を紹介。最後に「DeNAは持続可能で強固なチーム経営、スポーツ接触機会(人数×頻度)の圧倒的な増加、環境・設備・人など成長への投資に取り組み、スポーツ産業の発展に貢献していく」と話しました。
SBJセッション 部活動地域移行・展開のその先、『未来のブカツ』に向けて
間野 義之 氏 びわこ成蹊スポーツ大学 学長/早稲田大学 名誉教授
伊藤 清隆 氏 リーフラス株式会社 代表取締役
津々木 晶子 氏 渋谷区学びとスポーツ部学びとスポーツ課長



公立中学校の運動部活動の地域移行・展開が全国で進められています。教員の働き方改革により、教員以外のスポーツ指導者の配置をどのようにするかが模索されていますが、本質的には中学生年代のスポーツ環境の在り方が問われています。
びわこ成蹊スポーツ大学学長 間野氏のファシリテートで、中学校の部活動の現状、今後の展開についてディスカッションしました。
渋谷区の津々木氏はシブヤ「部活動改革」プロジェクト「SHIBUYA UNITED」によって、①学校部活動の地域連携・地域移行、②学校部活動にはなかった"やりたい"が見つかるユナイテッドクラブ、③地域でつながる教室&イベントに取り組んでいることを紹介しました。
リーフラスの伊藤氏は部活動支援を受託してきた経験から、教育委員会等の行政と保護者を含めた地域住民との関係構築などについて、活動する地域の事例を紹介しました。
間野氏は「地域によって事情が異なるので、地域の大人たちが自分たちの地域の課題と向き合い、中学生のことや地域の将来を考えて、それぞれの最適解を模索していく必要がある」と話しました。
サマライズセッション
吉倉 秀和 氏 びわこ成蹊スポーツ大学 准教授

吉倉氏が2日間のセッションを振り返り、それぞれに共通するメッセージから、「スポーツビジネスとは、スポーツ活動への参画や事業展開を通じて、社会を豊かにする、日常が充実する、未来や次世代を牽引する、新たな価値観を創造、模索し続ける産業クラスタである」とまとめました。
また、本コンファレンスの意義として、「新しい商品やサービスに係る考え方や価値観を共有すること」「緩やかな合意形成やネットワークを構築すること」「社会の視点で語る場であること」の3点を挙げ、会を締めくくりました。
ネットワーキング&アトラクション
1日目と2日目のセッション終了後、参加者同士のネットワーキングの時間を設け、スポーツビジネス関係者同士の有意義な交流の場となりました。
また、ネットワーキングの時間帯は、会場に設置した株式会社モルテンのシューティングマシン「B+Clutch Shot」の参加者による体験、そして株式会社ストラグルが運営するPARKOUR TOKOYO MAGOME STUDIOのパルクール選手が圧巻のパフォーマンスを披露し、大いに盛り上がりました。




レポートは、3日目のB to Cプログラムへ続きます。
1日目のレポートは→こちら